【2017/3/18】新国 ルチア

【指揮】ジャンパオロ・ビザンティ
【演出】ジャン=ルイ・グリンダ

■キャスト
【ルチア】オルガ・ペレチャッコ
【エドガルド】イスマエル・ジョルディ
【エンリーコ】アルトゥール・ルチンスキー
【ライモンド】妻屋秀和
【アルトゥーロ】小原啓楼
【アリーサ】小林由佳
【ノルマンノ】菅野 敦

【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

久々の日記です。
いつも通り、独断と偏見により好きなことを書くので気を悪くされる方もいるかもしれませんが悪しからず。

私が行ったのは3/14の初日
既にダイジェスト映像がアップされています。

歌手の細かいことを書く前に全体的なことを言うと合唱が上手かった!
エンリーコ役のルチンスキーもインタヴューで合唱褒めてましたが、確かにその通りだ。

個人的に気になったのはテンポ
ドニゼッティという作曲家の作品は古典寄りで、あくまでも緩急を少なく
できる限りインテンポの中でドラマを表現するか、ヴェルディ中期以降のようなアゴーギクの幅を効かせるかで印象が随分かわる。
本来は前者のような演奏が好ましいのだと思うけど、マリア・カラスとかいう人のせいで、ベルカント作品と呼ばれるモノが、ヴェリズモのように表現されるようになってしまい、聴衆もそういう表現に慣れたために、緩急の少ない演奏をドラマ性の欠如と捉える傾向が出てきた。
そこで今回の演奏なんおだが、なんとも中途半端感を覚えた。
一幕のフィナーレはそうとうたっぷり幅を効かせていたが、二幕のフィナーレや三幕のエドガルドとエンリーコの重唱はもっと感情の爆発が欲しいところでオケは動かない感じ。
この辺りは好みの問題もあるので何とも言えないが、オケを動かすなら言葉に反応して欲しいものである。

では主要歌手の感想
アルトゥーロ】小原啓楼

アルトゥーロ役は脇役ながら歌うところは結構目立つ
新国で登場する脇を固めるキャストとしては上手い方だと思う。
上もしっかり出ていたし、安定していた。
こういう脇をしっかり固められるキャストは大事
鼻声の明らかに日本人と分かるテノールが出てくると興ざめするからねw

【ライモンド】妻屋秀和

お馴染みの妻屋さん
相変わらず日本人離れした声だが、ドイツ物に比べるとレガートにやや難ありか。
深さは必要だがもっと明るい響きとレガートが欲しいところ。
主役の二人が軽く明るい響きなので尚更そう感じたのかもしれないが。

【エンリーコ】アルトゥール・ルチンスキー

この人知らなかったけど、素晴らしいヴェルディバリトン
ザンカナーロみたいな響きで、上のA位まで楽に出る。
最初からノリノリで、一幕のカバレッタで延々と上伸ばしてみたり、
三幕のエドガルドとの重唱では最後の音上げて完全にエドガルド食ったり。
そうかと思ったら、二幕のルチーアとの重唱
「もし私を裏切ったら、お前は私の亡霊を見ることになるぞ」というような部分を
憤慨して歌うのかと思ったら不気味な猫なで声で歌い始めるものだからマジで恐ろしいっす。
ここまでしっかりしたアクートのあるバリトンはそういない。
今度は是非ルーナ伯爵か運力のカルロを聴きたい。

【エドガルド】イスマエル・ジョルディ

よくも悪くも非常に現代的なテノールである。
FisやG辺りの音域がとても安定していてピアニッシモも巧み
ただ決定的に高音のアクートが弱い、ティンブロがない。
二幕のフィナーレでルチーアを罵る場面
「Hai tradito il cielo, e amor! 」(お前は天と愛を裏切った)
というもっとも劇的な表現が欲しい部分で声が飛ばないのはエドガルド役として物足りない

要所で鼻に掛かったり、高音のフォルテが抜けきらない。
アリアのカデンツァの最高音(H)は完全にファルセットから作ってますね。
そういう意味でとても柔軟な声帯なのだろうけど、喋るポジションで歌えていないのでしょう。
1973年生まれとのことなので、一番声の出る年齢だと思うが、単純にセリアは向かない声なのか?
ブッファやモーツァルト物ならまた聴いてみたい。

同じような声質でも、ジョルディより10歳近く若いピルグ(今度新国の愛妙で来日予定)
と比較すればアクートの差が分かるだろう。

【ルチア】オルガ・ペレチャッコ

色んな人の感想見てるけど、
デヴィーアの系統だ、ポストネトレプコだと色々な書き方で絶賛されている訳ですが、
私自身も、この機会逃したら新国には来ないと思って聴きに行ったタチである。
結果的にはもちろん素晴らしかったのだけどYOUTUBEで聴いた演奏と全然違う。

最近はノルマのアリアにも手を出してたし、コレより下手したら重くなってるかな~と心配して聴きに行った訳だけど、蓋を開けてびっくり、コレより軽くて明るい響きになっているのである。
そしてレガートが洗練されていた。
気になったことと言えば、(ジャ・ジェ・ジョ)の発音がフランス語っぽくなってしまってたことと、ハイEsが全てハマらなかったことくらい。(ハマらないと言っても明らかな失敗ではない)
ロシア系の歌手によく聞かれる低音域が詰まったり、発音が不明瞭ということがない。
元々低音も鳴る歌手だったが、そこを軽く響かせる技術も手中にしたか~と聴きながら勉強させて頂きました。

これから行かれる方は是非楽しんできてくださいませ。

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